9条を思いついた時のことを、幣原が述べています。
「第九条というものが思い浮かんだのである。
そうだ。もし誰かが自発的に武器を捨てるとしたら ー
最初それは脳裏をかすめたひらめきのようなものだった。
次の瞬間、直ぐ僕は思い直した。
自分は何を考えようとしているのだ。
相手はピストルをもっている。
その前に裸のからだをさらそうと言う。」
(「平野文書」より)
完全な無防備、非武装、絶対平和主義です。
幣原の提案を受けたマッカーサーは、
当初は、躊躇し、驚いていたようですが、
「賢明な元帥は最後には非常に理解して
感激した面持ちで僕に握手した程であった。」
(「平野文書」より)
幣原と会談した後、マッカーサーは、
ホイットニー民政局長に憲法草案の作成を命じます。
この時に提示したのが、「マッカーサー・ノート」です。
そこには、「国家の主権的権利としての戦争を廃棄する。
日本は、紛争解決のための手段としての戦争、
及び自己の安全を保持するための手段としてのそれをも、放棄する」
と記載されており、
自衛のための戦争をも否定しています。
1947年5月3日に日本国憲法が施行された時、
文部省はこの憲法を解説する教科書を作成しました。
それが、「あたらしい憲法のはなし」で、
新制中学校1年生用の社会科の教科書として発行されました。
「憲法」「民主主義とは」「國際平和主義」「主権在民主義」
「天皇陛下」「戰爭の放棄」「基本的人権」「國会」「政党」
「内閣」「司法」「財政」「地方自治」「改正」「最高法規」
の十五章からなり、
日本国憲法の精神や中身を易しく解説しています。
その「六 戦争の放棄」を抜粋して転載します。
「こんどの憲法では、日本の國が、
けっして二度と戦争をしないように、
二つのことをきめました。
その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、
およそ戦争をす るためのものは、
いっさいもたないということです。
これからさき日本には、
陸軍も海軍も空軍もないのです。
これを戦力の放棄といいます。
・・・もう一つは、よその國と争いごとがおこったとき、
けっして戦争によって、相手をまかして、
じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。
・・・また、戦争とまでゆかずとも、
國の力で、相手をおどすようなことは、
いっさいしないことにきめたのです。
これを戦争の放棄というのです。」
ここにも、明確に「戦力の不保持」が、
言われています。
しかし、この教科書は、1950年に副読本に格下げされ、
1951年からは使用されなくなりました。
1950年に警察予備隊を創設し、日本の事実上の再軍備へと
舵を切ったGHQの新方針に沿ったと思われます。
1965年、私が中学3年の時に使った教科書では、
憲法全文が付録として収録されていました。
今の中学生に聞いたところ、
「そんなものはない」と言っていました。