国連によると、7億人(世界の人口の約10%)以上の人々が、
依然として極度の貧困状態にあると言われています。
これらの人々は、1日2ドル以下で生活しています。
そして、貧困人口は再び増加傾向にあるそうです。
「貧困の撲滅」は、国連の掲げるSDGsの
第一のゴールになっています。
SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)
2015年の国連サミットで全会一致で採択された、
2030年までに達成すべき世界共通の国際目標。
貧困や環境問題などの地球規模の課題に対して、
17のゴール(目標)と169のターゲットが設定されています。
貧困は、2つの側面から捉えられています。
「絶対的貧困」(Absolute poverty) と
「相対的貧困」(Relative poverty) です。
「絶対的貧困」は、通常、国際的な貧困ライン(International Poverty Line)
を使って計測されます。
これは、現在、1日1人当たり、3ドルと設定されています。
1日3ドル以下で生活している人たちを、「絶対的貧困」層としています。
世界全体では、依然として、
7億人~7億6千万人が、
「絶対的貧困」の状態にあります。
「相対的貧困」は、その人が、所属している社会の中で、よい暮らしをし、
生存していくための十分な資源を持っているかどうか、に注目します。
「相対的貧困」は、同じコミュニティーに住む他の人々との
比較において計測されます。
このタイプの貧困は、その国もしくは地域における所得の
中央値の半分以下で暮らしている場合として定義されています。
米国を例に採ります。
連邦政府による、合衆国の貧困ライン(2018年)は、
1人当たり、12,140ドル(194万円=1ドル160円で計算)でした。
ところが、とてつもなく生活費が高い、サンフランシスコでは、
82,000ドル(1,312万円)が貧困ラインと見なされます。
1,300万円もの年収があって、貧困とは?!
サンフランシスコの1ルームのアパートの家賃は、
中央値で約3,500ドル(56万円)です。
年間で家賃の支払いだけで672万円もかかるのです。
税金や高い食費を支払うと、高給を取っていても、
生活の必要を満たすためには、悪戦苦闘しなければいけない様です。
実際、多くの先進国においては、
6人に1人が、相対的貧困にあるとされています。
これは、貧困が至るところに存在することを示しています。
大多数の専門家は、すべての場所で貧困、
特に相対的貧困を終わらせることは、とてつもなく困難であると見ています。
ですが、貧困を意義のある程度に減少させることは可能です。
過去20~30年の間に、世界では実に進展が見られました。
何億人もの人が、極度の貧困から脱出したそうです。
(特に東アジア地域において)
諸国の政府は、とても大きな役割を担っています。
社会的セーフティー・ネットのようなものが重要です。
これらは、人々が失業したり、病気になったり、
高齢化したり、養育・介護する必要が生じたときに、
彼らを支えるシステムです。
それには、失業給付や子育て支援、年金などが含まれます。
最低賃金制や労働者保護の政策も
低賃金の不安定な仕事に人々が捕らわれることを
防ぐことができます。
教育は、貧困を減少させる上で、最も強力な道具です。
婦人や少女への教育は、特に効果的です。
種々の研究は、常に、
婦人が教育されたときに、家庭はより健康になり、収入は上昇し、
社会はより安定化するということを示しています。
貧困は多次元的な問題で、単純ではありません。
種々の要因で発生します。
低賃金、健康が害されること、教育の不足、差別、自然災害、気候変動、
戦争・紛争など、多岐に渡ります。
以上の記事は、Tom Wilkinson氏の「Thinking in English PODCAST」の
❝380. What is Poverty?❞を参考にしています。
上記にサンフランシスコの例が出ていましたが、
7月20日の毎日新聞朝刊に、
同じカリフォルニア州のサンノゼについての記事が出ていました。
<以下、記事を抜粋・転載>
シリコンバレーの住宅市場は全米屈指の高騰ぶりだ。
2025年の戸建て住宅の販売価格(中央値)は
198万ドル(約3億1600万円)に上った。
全米(42万ドル)の5倍近くに達し、
一般的な家庭では容易に手が出せない。
賃貸物件もアパートの平均家賃(25年末時点)が、
月3000ドル台半ば(50数万円)で、
ニューヨークなどと並ぶ高水準だった。
背景にあるのは、テクノロジー企業の従業員の存在だ。
各社は優秀な技術者などの獲得に向け、
好待遇で従業員を迎え入れている。
サンノゼの世帯収入(中央値)は
年17.5万ドル(約2800万円)で、
全米の2倍を上回る水準だった。
高収入の労働者が限られた物件を確保するため
家賃がつり上がり、所得水準が大きく変わらない地元の住民に
しわ寄せが行く構図だ。
格差拡大は深刻だ。
連邦準備制度理事会(FRB)によると、
米国で裕福な上位1%が保有する資産の割合は
26年1~3月期で31.6%だった。
このうち、最上位0.1%の超富裕層の保有分だけで
全体の14.4%を占める。
これに対し、貧困層~中間層(下位50%)のシェアは
わずか2.5%にとどまった。
富裕層は株式などの保有比率が高く、
人工知能(AI)ブームに伴う株高の恩恵を受けて
資産が膨らみやすい。
一方、下位層は生活コストの負担に追われ、
株式などに資金を振り向けるのは困難だ。
富裕層に対する
減税措置などで富の再分配も進まず、
極端な富の偏在が解消される兆しは見えない。
多くの米国民が実感を伴う
「世界一の経済大国」となる道は険しそうだ。
<記事の抜粋・転載、以上>
以上見てきたことで言えるのは、
貧困を減少させるには、社会的なセーフティー・ネットを
充実させる政策が重要だということです。
これは、新自由主義的な方向ではなく、
社会民主主義的な方向です。
小さな政府ではなく、大きな政府です。
政府の働きが重要だということですが、
それは、政府が産業政策を推し進め、
経済成長をもたらせばいいということではありません。
日本、アメリカ、EU諸国のような先進国では、
「絶対的貧困」の問題は発生しませんが、
「相対的貧困」に多くの人が見舞われています。
したがって、ここでは「相対的貧困」に焦点を当てます。
ただ、「絶対的貧困」を考える必要がない
と言っているのではありません。
アフリカでは、気候変動の影響で、雨がまったく降らなくなり、
農業が壊滅した地域があります。
農業しかなかったところですから、生活できません。
男性は、密航してヨーロッパに出稼ぎに行ってました。
「絶対的貧困」が問題になっています。
彼らは被害者で、加害者は我々先進国です。
彼らには罪はありません。
我々がCO2を出し続けてきたことが原因です。
だから、「絶対的貧困」は、我々には無関係だとは
言えないのですが、
ここでは、「相対的貧困」のことを論じます。
先の毎日新聞の記事でも垣間見ることができますが、
アメリカにおける貧困問題とは、格差の問題でもあります。
そして、現実の問題として、彼らが悲鳴を上げているのは、
家賃、食料品などの物価の高騰です。
ニューヨークやサンフランシスコなどの、大都市では
賃金も高いけど、物価も高いのです。
カリフォルニアからテキサスなどへ人口が流出している
という話を聞いたことがあります。
物価が高くて生活していけない
ということではないか、と思います。
インフレ、物価高の最大の原因は何か?
それは、彼らの政府がそういう政策を取っているからです。
トランプのような変種が出てきて、
関税を上げたり、イラン戦争を始めて、
輸入品、ガソリン価格の高騰を招いたのは勿論ですが、
そうでなくても、
経済・金融の政策が、インフレ・物価高を指向しているのです。
なぜ、インフレ・物価高を指向するかというと、
それが、経済成長率を上げることに資すると考えているのです。
この思考法・経済理論が問題なのです。
2%のインフレを目指すというから、驚きです。
私のような年金生活者は、給料が上がるわけではないので、
ただ単に、購買力が落ち、資産は目減りするという、
まったく、ありがたくも何ともない、迷惑な政策です。
インフレ政策は、株価の高騰をもたらしますから、
株を大量に保有する富裕層にとっては、うれしい政策です。
富裕層向けの政策を、自らも株を保有しているであろう
エリートたちが立案しているのです。
彼らの関心ごとは、経済成長率という数字を上げることです。
ですから、国民の多数が豊かにならなくても構わないのです。
一部に富が集中しても、全体のGDPが上がればいいのです。
彼らにとっては、「相対的貧困」を減少させることよりも、
経済成長率を上げることの方が重要なのです。
国民多数が豊かにならないで、何のための経済成長なのでしょうか?
その成果があって、アメリカは、西側先進国の中では、
もっとも高い経済成長率を達成しています。
2011年~2024年の経済成長率の平均です。
日本:0.63 アメリカ:2.40 ドイツ:1.13 イギリス:1.58
ですが、そのアメリカは病んでいます。
平均寿命が低下しているのです。
アメリカ帝国の崩壊を予感させます。
経済成長率を上げるということは、
必ずしも国民が豊かになるということを
保証するものではありません。
かえって、経済成長率を上げることを目的にした、
諸施策や経済思想が、格差の拡大をもたらし、
「相対的貧困」を拡大させています。
諸施策には、2%のインフレターゲットを目指す金融政策や、
富裕層への減税などが含まれます。
経済思想というのは、新自由主義、市場原理主義、小さな政府という考え方です。
「相対的貧困」を減らすには、
これらの経済政策・経済思潮からの脱却が必要です。
アメリカは、特に❝自由の国❞という意識が強いからでしょうか。
政府は、余計なことをするな、という考えが強いようです。
また、冷戦を戦ってきたということもあってか、
「社会主義」という言葉がきらいで、偏見もあるようです。
日本のような、国民皆保険に相当する制度はなく、
病気になって医療にかかったら、とてつもない金額を請求され、
貧困層に転落するということもあるそうです。
共和党支持者の中には、
こういう制度は、「社会主義」だと言って
反対する人たちがいるのです。
そういう考え方を変えなければ、
「相対的貧困」を減少させることはできません。
日本でも、「ワーキング・プア」ということが言われ、
「相対的貧困」は、取り組むべき問題として認識されています。
ただ、「生活苦」→「経済が問題だ」→「景気をよくしなければ」
→「経済成長だ」と、単純に考えられているようです。
経済の問題というと、すぐに景気と捉える向きがありますが、
今、生活を圧迫してるのは、インフレ・物価高です。
これが、問題の根源で、景気ではありません。
今、景気はいいのです。
有効求人倍率は高く、失業率も低いのです。
生活苦の原因は景気ではありません。
企業が倒産しているのは、商品が売れないからではありません。
消費・需要はあるのです。
消費・需要はあっても、
物価高で採算がとれない、人手不足で働き手がいない、
ということで、企業は倒産しているのです。
現状で、
消費を増やし、景気を刺激するというのは、
まったくの筋違いの方策で、ただ、物価を押し上げるだけです。
バカの一つ覚えのように、積極財政で消費を増やせば、
景気を刺激し、経済成長を達成できると考えるのは、
浅はかです。
アベノミクスから続く、
インフレ・物価高をもたらす政策を転換することが必要です。
この政策が一番問題なのです。
金融緩和・積極財政、をやめることです。
高市政権を誕生させたことが、最大の誤りなのです。
経済成長できていないから、貧困があるのではありません。
もっとも経済的に繁栄しているニューヨークですら、
市民が貧困にあえいでいるのです。
経済成長のスイッチを押して、押して、押して、押しまくる
という、その思想・政策こそが、貧困をもたらしているのです。
これからは、経済成長率を上げることよりも、
「相対的貧困」を減少させることに、
経済政策の軸足を移すべきです。