「経済成長第一主義」からの脱却

今、インフレが起こっている理由。

「アベノミクスによる大規模緩和策が
現在も続いているということが最大の原因です」(加谷珪一)

なのに、日銀・植田総裁が、利上げして
金融政策を正常化しようとしているのを、
必死に足を引っ張っているのが、高市早苗です。

アベノミクスは、意図的に
円安・物価高・株高をもたらす政策です。

おかげで、日経平均株価は、とうとう
59,000円台に突入しました。
6万円にせまるという前代未聞の状況です。

昔、「狂乱物価」という言葉がありましたが、
今は、「狂乱株価」です。

株を持っている人は、ホワイトハウスでの高市早苗のように
踊り狂いたいのかもしれません。

アベノミクスは、元々デフレ脱却を目指して、
物価高を指向した政策でした。

でも、日銀・黒田総裁の在任中には、デフレ脱却はできませんでした。
黒田さんは、就任時に、2%のインフレターゲットは、
異次元緩和ですぐにでも実現できるようなことを吹聴していたのですが。

アベノミクスは、デフレ脱却はできないまま、
円安、企業物価上昇をもたらしましたが、

産業は衰退、一人当たりGDPは落ちて、
実質賃金は継続的に低下。
人口減は止まらないという状況です。

なのに、
金利は下げたまま、
円安・インフレ・物価高を止めない。

アベノミクスの失敗を認めない。
そういう人が総理大臣をやっています。

「株高」の根本的原因は、日銀の大規模緩和策です。

円が余っていることが、物価高を引き起こし、
株高を招いています。

金融緩和→インフレ→物価上昇→株高
という構図です。

こういうインフレの時代は、株や不動産など、
物価に応じて価値が上がる資産を持っている人=富裕層は、
ますます富み、

持たざる者はますます貧しくなり、
貧富の格差が拡大します。
インフレ政策とは富裕層のための政策であると言うことができます。

また、財政規律のゆるみと円安の進行は、
日本国への「市場」の信頼を揺るがせています。

国債の格付け低下・長期金利の上昇をもたらしています。
これによる国債費の増加は、国家財政をさらに圧迫しています。
私の計算ですが、約11兆円。(高市総裁誕生から今日までの金利上昇)

これは、高市早苗を総理・総裁にしていることにより
日本国が負担している費用です。
とても首相の給料どころの話ではありません。

アベノミクスの何が悪かったのでしょうか?

これは、アベノミクスだけの問題ではなく、
世界を席巻している経済学の問題だと思っています。

それは、「経済成長第一主義」です。
「経済成長率第一主義」「GDP主義」です。

誤解のないように言っておきますが、
私は経済成長が悪いと言っているのではありません。
経済成長を第一とする考え方がよくないと言っているのです。

経済は「循環」すればいい、「成長第一」である必要はない、
「成長第一」を追求すべきではない、
それが社会をひずませている、と思っています。

GDPで計測される数値(経済成長率)を最大化することが、
経済学の目的であるかのように考える風潮があります。

そして、それは経済学に留まらず、
すべてを支配する傾向があります。

戦前の日本は、軍が第一でした。
だから、軍国主義と呼ばれました。

軍が、国防がすべてに優先するトップ・プライオリティーでした。
そして今は、軍に替わって、経済がその地位を占めています。
「軍国主義」が「経済第一主義」になっただけです。

単一の価値観で物事が測られています。
あらゆる事象が、貨幣的価値に換算されて
値踏みされます。

経済成長率という数字を上げること
だけが大切であるかのように振舞われてはいないでしょうか?

維新や自民がご熱心なカジノ・リゾートも
倫理的な視点が欠落し、
「儲かればいい」という発想になっています。

新自由主義と言えば、
アメリカのミルトン・フリードマンですが、
彼の率いるシカゴ大学の研究者・学生らが、

チリのアジェンデ政権が軍事クーデターで倒れた時に
歓声を上げたという話を聞いたことがあります。

倫理観がないのです。

安倍さんの場合は、新自由主義ではない様です。
国会で質問されたときに、はっきりと
「それは自分たちの行き方ではない」と否定しています。

安倍さんの母方の祖父は、岸信介ですが、
彼は、「満州国は、自分の作品である」と言いました。

この言葉には、戦前の「革新官僚」「新官僚」の
第一人者としての、面目躍如たる思いが込められています。

満州国は国家(日本)主導の計画経済(「満洲産業開発五か年計画」)
が中心であったので、新自由主義とは真逆の経済思想です。

こうした、国が経済に強く介入するやり方は、
戦後の日本の政府・官僚にも影響を与えていると言われるので、
安倍さんの経済思想は、新自由主義ではないのでしょう。

(日本維新の会や、渡辺喜美の「みんなの党」は、
新自由主義の傾向が見られました)

安倍さんがアベノミクスで最初にやったのは、
日銀総裁を白川さんから黒田さんに替え、
2%のインフレターゲットを導入したことでした。

2%のインフレターゲットは、欧米でも取られている
金融政策ですが、この考え方が、
まさに「経済成長率第一主義」です。

インフレ・物価高は、いいわけがないのですが、
彼らは、これが経済成長率を押し上げると考えているようです。

インフレ・物価高では、株価は上昇しますが、
株を持っている、富裕層・機関投資家には都合がよくても
株を持たない庶民には、うれしくない政策です。

多少給料が上がっても、さらに物価は上がり続け、イタチごっこです。
結局、株を持ったエリートたちが、富裕層・大企業のために
やっている金融政策という感じがします。

インフレ・物価高に苦しむ、没落した中間層・貧困層の怒りが、
トランプ、MAGA(Make America Great Again)を
生み出しているのではないでしょうか。

トランプという選択、彼の方法論は間違っており、
トランプ支持者には、問題の根本原因が何なのか
よく見えていません。

が同様に、民主党も、彼らの怒り、問題の本質が十分に理解されず、
したがって有効な処方箋を提示できていません。

既存のエスタブリッシュメントたちが取ってきた政策に、
庶民がノーを突き付けているのです。

何年か前に、「ウォール街を占拠せよ」(Occupy Wall Street)という
運動がありましたが、これなども同様だと思います。

これまでのマネー資本主義、金融資本主義からの変換が求められています。
私は、それは「経済成長第一主義」からの脱却だと思ってます。

まずは、2%のインフレターゲットという政策は止めていただきたい。

デフレも、インフレもよくない。
物価は安定している状態が好ましい。
それが中央銀行の第一の存在意義です。「経済成長」ではありません。

経済学者が経済をダメにする(アベノミクス)

アベノミクスのブレーンには、
イェール大学名誉教授・浜田宏一がいました。

アベノミクスの第一の矢は、金融緩和。
第二の矢は、積極的な財政出動でした。

このアベノミクスは、今も継続されています。
そして、アベノミクスは何ら総括されることもなく、
その継承者を自他ともに認める高市早苗が総選挙で大勝しました。

かつては、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
という本が出た時期もありました。(1979年)

いまでは、遠い昔のことです。
まだ、そのころの意識を引きずって
日本は大国だと思いこんでいるのではないでしょうね。

世界のGDPにおける日本のシェアです。

1994年(ピーク) 18%
2000年       15%
2025年(推計)  3.4~3.5%

世界のGDPにおけるアジア(日本を除く)のシェアです。

1994年           5%
2000年           7%
2025年(推計)  24~25%

日本の相対的地位の低下と、
アジアの相対的地位の向上が、
はっきりと数字に示されています。

一人当たりのGDP(2025年(推定))では、

日本は、世界で 40位
    アジアで 6位  です。

一人当たりのGDPで、日本より上位にある
アジアの国(地域)は、

1位 シンガポール
2位 マカオ
3位 香港
4位 台湾
5位 韓国

です。日本は、少し前に台湾に抜かれていましたが、
昨年は、韓国にも抜かれたようです。

円の国際社会での評価:
為替相場の2012年⇒2026年1月末の比較

対 中国人民元      37% 下落
対 シンガポールドル   42% 下落
対 タイバーツ      42% 下落
対 フィリピンペソ    19% 下落
対 マレーシアリンギット 24% 下落  
対 台湾ドル       39% 下落

日本の円は、アジアのどの通貨に対しても下落しています。
日本経済の相対的な地位が、
アジアの中で地盤沈下しているということを表しています。  

アベノミクスの異次元緩和、財政出動という政策は、
円安・株高という効果をもたらしましたが、
上記の数字は、その結果です。

日本の経済的地位は低下し、日本はより貧しくなりました。

アベノミクスの異次元緩和によって、
日米間で金利の差が現出しました。

金利ゼロの日本の円を持っているよりも、
金利のより高い米ドルを持っている方が有利なので、
円を売って、ドルが買われます。

こうして、円安がもたらされます。

円安なので、お買い得感があり、
外国資本は、日本の株・不動産を買い、
株は高騰します。

一方、円安により、輸入価格は高騰し、
物価は高くなります。

物価高では、当然庶民は苦しみます。
企業でも、比較的価格転嫁が可能な大企業よりも
それがむずかしい中小企業により深刻な打撃を与えています。

このように、アベノミクスは、株を持っている、
富裕層・大企業にとっては、ホクホクでした。
株を持たない庶民や中小企業は苦しめられています。

財政出動にしても、政府がお金を使えば、
それが雪だるま式に経済効果を生む
なんてことは考えられません。

雪だるまは起こってもすぐに減衰し止まってしまいます。
雪だるま効果は続かないのです。
かつて日本が高度成長したころとは、状況・環境が違うのです。

機械を買っても、中身はメイド・イン・チャイナ。
食料品も輸入品ばかりです。

お金を使っても、みんな
アメリカや中国に吸い取られてしまいます。

それなのに、政府がお金を使うことが、
景気を浮上させ、経済を好転させると、
単純に考えて、未だにお金を使いたがる政権が居ます。

お金を使えば、
自分たちはよく仕事をやっていると思うようです。

政府にお金を使わせたがる財界が居ます。
たくさんお金を使わせると、
自分たちが自民党に献金しても、元を取った気になるのでしょうか。

4月9日の毎日新聞朝刊に、
「企業倒産1万件超え」
と言う見出しの記事が出ていました。

そして、
「2年連続 物価高・人手不足重荷」
というサブタイトルがついていました。

東京商工リサーチによると、
2025年度の企業倒産(負債額1000万円以上)は、
前年度比3.6%増の1万505件だったそうです。

2年連続で1万件超えです。
物価高や人手不足が重荷になり、
中小零細企業の経営を圧迫しています。

倒産件数のうち、
従業員が10人未満の企業が
約9割を占めました。

積極財政で、お金を使って消費を刺激すれば、
景気が上向くという状況ではありません。

上の例でも、消費がないから、
ものが売れないから倒産しているのではありません。

物価高で収益を出せなくて、
人手不足で事業運営が成り立たなくて
倒産しているのです。

積極財政で消費を刺激しても、
物価高・インフレを招き、庶民を苦しめ、
中小零細企業の経営をさらに圧迫するだけです。

今必要なのは、物価高を抑え、インフレを抑えることです。
財政健全化、緊縮財政、日銀の利上げなどの政策です。

なのに、政府は、毎年毎年、史上最高という予算を計上し
バラマキが止みません。
こうして、1300兆円の借金が積もりました。

国債費は、国家予算の4分の1を占め、財政を圧迫しています。
国債費とは、政府が過去に発行した国債(借金)の返済(償還)や
利子の支払いに充てる費用です。

今の人が、いくらがんばって税金を納めても、
4分の1は、過去の人の借金の穴埋めをしているのです。

高市政権は、財政健全化をまったく気にかけていません。
さらに借金を重ね、
将来世代に負の遺産を相続させようとしています。

10年物国債の利回りは、
自民党総裁選挙前の昨年9月22日には、
1.665%でした。

最近は、2.5%にもなっています。
日本政府は借金を返済する気があるのかと、
市場の日本政府への信頼低下が、金利上昇に現れているのです。

上記の金利差(0.835%)に、政府の借金1300兆円
をかけると、約11兆円です。
これは、高市早苗が首相であることが、日本国にもたらしている損失(負担増)です。

数年後には、国債費は、予算の30%になります。
とんでもない、借金大国です。

流れを変えることが喫緊の課題ですが、
将来、どの党が政権をとっても、

過去30年の自民党政権の負の遺産は背負っていかねばなりません。
いきなりバラ色とはいきません。

経済学者が経済をダメにする(小泉構造改革)

小泉純一郎政権(2001年~2006年)の時には、
経済ブレーンとして、慶応大学の竹中平蔵がいました。

小泉構造改革では、日本において初めて本格的に
新自由主義的な経済政策がとられました。

「市場原理主義」に基づき、民営化を推進し、
「小さな政府」を目指しました。

製造業への派遣労働の解禁など、労働規制が緩和されました。
これを起点に、非正規雇用労働者の割合が拡大し
今日に至っています。

非正規雇用者は、2,126万人で、
雇用者全体の約4割にまでなっています。

結果として、欧米に比べ労働分配率が低いことと相俟って、
勤労者全体の所得を押し下げ、
日本経済の足腰を弱くしています。

東証一部上場企業が、史上最高の利益を上げていても、
労働者の賃金を上げるほうには回らずに、
企業の内部留保が増え続けるという傾向がありました。

労働分配率が低いというのは、
欧米に比べ、労働組合が弱いというのが原因だと思います。

イギリスは、職業別労働組合。アメリカは、産業別労働組合。
と言われていますが、日本は企業別労働組合です。
こういう歴史的経緯もあり、日本では労働組合が弱いのだと思います。

1989年~1991年のソ連・東欧圏の崩壊は、
日本の政界では、左翼勢力の没落をもたらしましたが、
労働界もより穏健化の方向に再編され、あまり戦闘的ではなくなりました。

また、非正規雇用者の割合増は、経済的な理由から、
結婚しない、結婚しても子供を産まないという人を増やし、
少子化の一因にもなっています。

新自由主義的な経済思潮は、小泉以後も強く残っています。
これは、冷戦以後(ソ連・東欧圏の崩壊以後)の世界的な潮流で、
貧富の格差を拡大させ、❝病める社会❞、❝分断した社会❞をもたらしました。

冷戦の終了は、東側の人々にとっては、
共産主義・共産党の専制から解放されて、自由を得たと言えますが、

西側では、「資本主義が冷戦に勝った」と言う風に
歴史のメッセージを曲解し、新自由主義的な経済思潮がはびこり
資本主義を逆に劣化させたと思います。

冷戦は、資本主義が勝ったのではなく、
共産主義が、自壊したのです。

共産主義(狭い意味での社会主義)が間違いであった、
というのが歴史のメッセージです。
資本主義の矛盾は、なんら解決されていません。

冷戦期の方が、資本主義側は真面目に取り組んでいました。
かつては、自民党の総理大臣でも、施政方針演説で、
「福祉社会」に言及する人もいました。

1977年・福田赳夫。
「真の福祉社会は、福祉の心に裏打ちされてこそ初めて成り立つ」

しかし、その後、「活力ある社会」
という言い方が強調されるようになります。

これは、暗に「福祉国家」は、
活力のない社会だと言っているようでした。

今日の、高市首相の「強い経済」もこの系譜です。

でも、幸福度の指標で上位にある国は、
いずれもみな北欧の高福祉・高負担の国です。

そういう国では、高い税金を払っても、
政府が自分たちのために使ってくれるという、
政府に対する信頼感があります。

日本の場合、利権政治のイメージが強く、
自民党に献金する大企業、圧力団体のために

ひたすら資金が投入されていると見られ、
政府への信頼感が薄いのではないでしょうか。

一方、「小さな政府」を目指す共和党が強いアメリカでは、
国民皆保険など、「あんなのは社会主義だ」と言っていますが、
平均寿命が低下しているのです。

フランスの人口統計学者、エマニュエル・トッドが
1976にソ連の崩壊を予言した時には、
乳児死亡率などの人口統計データを基にしたそうです。

これを考えると、アメリカにおける平均寿命の低下は、
アメリカの崩壊を予言しているのかも知れません。

そして今、私たちは、「トランプ現象」に
それを見ているとも言えます。

でも、アメリカには、レジリエンス(resilience;回復力)があると言うので、
それに期待したいと思います。
「トランプ現象」など、今だけの一時的な現象だと。

政治学者が政治をダメにする

政治学者が政治をダメにし、
経済学者が経済をダメにして来た
というところがあります。

平成の政治改革では、
東大の総長を務めた、政治学者の佐々木毅(たけし)が
中心的な役割を果たしました。

この平成の政治改革で、
①小選挙区比例代表並立制 と
②政党助成金 が導入されました。

そして、安倍一強、高市一強の構造をもたらしました。

小選挙区比例代表並立制という考え方は、
それ自体が悪いとは思いませんが、

小選挙区と比例代表の議席配分で、
小選挙区の割合が大きすぎるため、
得票率で、比較多数の党がドラスティックに議席を席巻してしまいます。

先の衆議院選挙の小選挙区では、
自民党は49.1% の得票率でしたが、
    85.8% の議席占有率でした。

一方、
中道改革連合は 21.6% の得票率で、
         2.4% の議席占有率でした。

こうしたことが影響して、高市自民党は、
史上初めて衆議院で単独3分の2以上を獲得することになりました。

安倍一強政治では、自民党が数の力で押し切り、
国会を軽視する政治運営が強行されました。

また、自民党内でも、議員は❝公認❞がかかっているので、
安倍さんの意向に反対することはなく、
皆さんイエスマンになっていました。

こうして、民主主義の後退、政治の劣化が見られました。

高市政権は、発足してまだ数か月ですが、
国会では予算案を審議することもなく、いきなり解散するなど、
審議を尽くさない「アベ政治」になっています。

安倍さんも、高市さんも、あまり民主主義的な価値観を
もっていない方々なので、ある意味仕方のないことではあります。

そして、政党助成金をたんまりもらった自民党は、
その資金力をふんだんに使って、選挙戦を戦い、
SNSに有料動画を流し、1億回の再生回数を獲得しました。

投票日に全国紙に広告を出していました。
本来、投票日には、選挙運動をしてはいけないそうですが、
選挙運動ではなく、政治活動なんだそうで、なんだかわけのわからない説明です。

安倍さんの岩盤支持層は、有権者の4分の1ぐらいと言われていました。
この人たちは、そのまま高市指示になっていると思われます。

高市内閣の支持率は、依然として高く、
比較的低めに出る毎日新聞の世論調査でも6割近くありました。

ただ、多くはふわふわっとした支持が多いと思います。
この層は、高市早苗の政治思想・歴史観、
自民・維新連立政権の政策の具体的内容も知らないで、

「この人なら何かやってくれそう」ぐらいの気持ちです。
十分に内容を理解して支持している層は、やはり4分の1ぐらいだと思います。

4分の1の人の意向によって、政治が方向づけられています。
これは好ましいことではないので、
「平成の政治改革」を再度修正する「改革」が必要です。

選挙制度の見直し、
政党助成金・企業団体献金の廃止は
やっていただきたいものです。

なのに、維新は、比例代表の議席数を削減することを
「改革」と言っています。

冗談ではありません。
国会は、ますます民意を反映しなくなってしまいます。

「イラン戦争」が突きつける五つの現実

毎日新聞、4月5日朝刊。
イギリスの「エコノミスト」の元編集長、
ビル・エモットのコラムが目にとまりました。

「イラン戦争」が突きつける五つの現実
核抑止同盟の揺らぎ

というタイトル、サブタイトルがついています。
記事を抜粋・要約します。

戦闘継続中のため、最終的な結論を出すのは時期尚早だが、
長期的な変化について、下記5点が顕在化している。

<1点目>

まず、長期的に最も懸念されるのは
核兵器拡散への潜在的な影響だ。

北朝鮮の金正恩は、
自国がイランのような攻撃を受けずにいるのは
核開発のおかげだと豪語している。

日本の政府関係者の間でも最近、
核保有の是非を巡って
驚くほど率直に議論されている。

同盟国を核の傘で守る米国の「拡大抑止」が
もはや当てにならないのではないか
との懸念が反映されているのだろう。

<2点目>

インド太平洋地域で米国が主導する、
中国・北朝鮮・ロシアに対する抑止力の
強さと信頼性に疑問を投げかけた。

米国は戦闘開始からわずか数週間のうちに
最良の兵器やミサイル防衛システムの備蓄の
大部分を使い切ってしまった。

年間1兆ドル近くの防衛費を費やしているにもかかわらず、
短期間の戦闘で米国が深刻な戦力不足に陥っているようにみえる。

<3点目>

将来的にミサイルやドローン攻撃に対する防衛が必要になる
という教訓を多くの国々に示した。

アラブ首長国連邦やカタールなどの湾岸諸国は
イランによる度重なる攻撃にさらされたが、

既存の防衛システムでは十分に防げなかった。
理由の一部は、迎撃ミサイルの世界的な不足だ。

<4点目>

エネルギーと重要鉱物を備蓄し、
供給網の多様化を図る必要性。

ホルムズ海峡は世界の年間石油供給量の
約5分の1が通過する戦略的な「要衝」だ。
しかし、米国は軽視していた。

<5点目>

トランプ米大統領が
過去1年にわたって同盟国を侮辱し、
批判してきたにもかかわらず、

同盟国が彼を支持しないと
すぐに怒りをあらわにする。

イラン戦争は、彼がかんしゃくを起こして
北大西洋条約機構(NATO)から
米国が離脱する可能性を高めている。

以上が、ビル・エモット氏のコラムの抜粋・要約です。

いずれも注目すべき視点だと思います。
ただし、よく吟味してみることも必要です。

また、もし仮にそうだとしても、
「だったら、どうする」という戦略・方策は、
慎重に、複眼的に考えたいものです。

映画「蟻の兵隊」

つい最近まで、こんなことがあったとは、知りませんでした。
だから、おそらく
大多数の方もご存じないのではないかと思います。

4月5日、毎日新聞朝刊に、
この映画を題材にした記事が掲載されていました。

「蟻の兵隊」は、映画監督・池谷薫(いけやかおる)が、新潟県出身の
元日本兵・奥村和一(わいち)さん(2011年に86歳で死去)
を主人公にして撮影した、ドキュメンタリー映画です。

2006年に公開されました。
近年、池谷監督は学生を対象にした
「蟻の兵隊」の上映会や講義を各地で開催しているそうです。

戦後80年の2025年度は
最多の全国24カ所に出かけました。

1945年8月15日の終戦後、
中国・山西省では軍の命令を受け、
約2600人の日本兵が残留します。

奥村さんが所属した、北支派遣第1軍です。
終戦後、蒋介石の国民党軍は共産党軍(八路軍)への対抗上、
第1軍に残留、協力を要請しました。

そして、第1軍の幹部は国民党側と
「密約」を締結します。

軍の幹部は兵士たちに
「これは日本復興のための戦いだ。追って援軍を送る」
と言い残して帰国してしまいます。

この密約のおかげで、国民党軍支配地域にいた、
他の日本軍部隊は、比較的スムーズに復員できたようです。

残留させられた兵士たちは、
国民党軍と共産党軍の内戦に巻き込まれ、
日本兵約550人が死亡します。

奥村さんは戦闘で負傷し、捕虜生活を経て
1954年9月にようやく帰国します。
終戦から9年が経っていました。

ところが、帰国して
信じられない現実を知らされます。

奥村さんが故郷の役場で軍籍を確認すると、
「現地除隊」と記されていました。

軍の命令ではなく
「志願して残留した逃亡兵」扱いにされ、
軍人恩給の対象からも外されていました。

「自主的に中国に残った」という扱いをされてしまった、
奥村さんら13人の元日本兵や遺族は
2001年5月、

「中国に残ったのは軍幹部の命令があったからだ」
として、国に軍人恩給の支給を求めて
東京地裁に提訴します。

最高裁まで争いますが、2005年に敗訴が確定しました。

軍幹部らは残留を命じた事実を徹底的に隠し、
司法は元兵士らの訴えを聞き入れませんでした。
マスメディアも関心を向けませんでした。

池谷さんは、
人間の尊厳をかけて人生の終盤まで国と闘う
元日本兵たちから目が離せなくなり、カメラを回し続けました。

池谷さんが、学生たちに語っています。

「奥村さんたちは軍にだまされ、
戦後の日本はこの事件をなかったことにした。
国に2度捨てられたんだ」

「この映画は奥村さんから託された遺言なんだ」

毎日新聞の記事の冒頭に、昨年12月に
大阪大キャンパスで行われた上映会で、

来場者たちが固唾をのんで見つめていたとして、
後半のあるシーンが描かれていました。

<以下、記事を転載>

その場面とは-。

終戦記念日。
東京・九段の靖国神社で、集まった迷彩服や軍服姿の男性らが

「二度と戦争に負けないことを誓う」
「天皇陛下万歳」
と叫ぶ。

そしてスーツ姿の元日本兵がマイクの前に立つ。

「開戦詔書」の言葉に触れ、
かの大戦で犠牲になった「英霊」に感謝を述べた。

戦後29年間、フィリピンに残留後に帰国した
小野田寛郎(ひろお)さん(2014年に91歳で死去)。

開戦詔書とは昭和天皇が、
自存自衛と東アジアの安定のために
対米英開戦を宣言したものだ。

その後、別の老人が
小野田さんにこう詰め寄った。
「侵略戦争を美化するのですか」


すると小野田さんは
「美化じゃない。正当化しているだけですよ」
と大声で突き放した。

<記事転載、以上>

この小野田さんに話しかけた
別の老人が、奥村和一さんです。

映画では、奥村さんが自身の加害行為と向き合う場面もあります。

80歳を過ぎた奥村さんは
戦時中に「刺突訓練」をした山西省の現場を訪ね、
「殺人現場に来ました」と語ります。

日中戦争中、中国各地では
多くの初年兵が刺突訓練を経験しました。

上官の命令で、
柱に縛り付けられた中国人の捕虜や民間人を
銃剣で殺害するのです。

「肝試し」と言われました。
奥村さんも経験した一人です。

繰り返し銃剣を突き刺した手の感触が消えず、
長年苦悩します。

奥村さんは、中国での旅で、
日本軍兵士に強姦された
中国人女性とも対面します。

戦後も心身に深い傷を抱えたこの女性も
日本政府を訴え、敗訴していました。

悪夢のような体験を聞き、
奥村さんも自身の殺害行為を告白しました。

女性は柔らかい表情で
「今のあなたは悪人に見えない。
家族に過去を話したらどうか」

と語ります。
帰国後、奥村さんは自身の加害を
初めて妻に伝えました。

高市首相訪米、日米首脳会談

先月の高市首相の訪米・日米首脳会談については、
米側から自衛隊の派遣などについて
何か要請されるのではないかと懸念される向きがありました。

が、そういうこともなかったので、
「なんとか無事に切り抜けた」といったところが、
日本側の評価だったような気がします。

ただ、これは高市訪米前に、すでに
トランプがNATOなどへの艦船派遣要求を
撤回していたので、

ある意味、既定の路線だったとも言えます。
「無事に切り抜けた」のは、当たり前の話で、
特段、手柄というほどでもないのですが、

まあ、無事に終わったのは事実なので、
日本側としては、無難にこなしたという
評価が一般的なのかもしれません。

ただし、これは、公式の表向きの話です。

首脳会談では、公表されないやり取りも
あったはずです。
そこで何が話されたかは、不明です。

3月22日放送の米CBSテレビの番組で、米国のウォルツ国連大使は、
ホルムズ海峡の安定確保を巡り、高市早苗首相が自衛隊による支援を
「約束した」と発言しました。

翌23日の記者会見で、木原稔官房長官は、ウォルツ氏の発言について
「日本として何か具体的な約束をしたとの事実はない」
と反論しました。

事実関係は、わかりません。
以上が、表向きの話です。

私は、高市首相の
①政治思想・歴史観といった、イデオロギー面と
②政治的、経済的な政策面から、政権を批判して来ました。

いわば、正攻法で、正面から対峙してきたのですが、
今回の首相訪米では、周辺的なものにも危うさが見られました。

あまり見たくない写真が5枚ほど撮られていました。

<1枚目>

ホワイトハウスでの晩餐会で、浮かれて踊っている高市首相の写真。
よほど、お気に入りの曲を演奏してもらって、はしゃぎたくなったのでしょうが、
一国の宰相としては、ちょっと軽いノリでした。

ビル・クリントンが来日し、橋本龍太郎首相が、
渡辺貞夫のバンド演奏で歓待したことがあります。
ジャズの定番「A列車で行こう」を演奏していました。

クリントンは、手でリズムを取り、喜んではいましたが、
リアクションは、とても抑えられたものでした。
大統領は、抑制するものです。

それに比べると、高市首相のリアクションは、
軽すぎます。

<2枚目>

トランプ大統領との共同記者会見の場で、
日本人記者からの質問にトランプが「真珠湾攻撃」でやり返したときの、
高市首相の大きく目を見開いた写真。

トランプが記者たちに質問を促した時に、
一人の日本の記者が、イランへの先制奇襲攻撃について

「欧州や日本などの同盟国に、
なぜ事前に通知してくれなかったのですか。
日本国民はみんなびっくりしていますよ」

といった趣旨の質問をしたのに対して、
トランプは、

「奇襲については、日本よりくわしい国はないだろう。
真珠湾攻撃、なぜ教えてくれなかったの?」
とやり返しました。

完全にトランプの一本勝ちでした。
笑点なら、「山田さん、トランプさんに座布団2枚上げて」
といった場面でした。

周囲にいた、アメリカの閣僚たちの笑いを取りました。
海外メディアは、この話題を大きく取り上げ、
高市首相の写真は、世界をめぐりました。

トランプからこう言われたら、
日本の首相としては、一言も発せられないのは当然です。
私がその立場だったら、やはり無言だったと思います。

ただ、あの大きく目を見開いたリアクション。
この写真が、トランプのジョークの殿堂入りの場面に花を添え、
アメリカや世界のニュースメディアに格好の材料を提供したのです。

<3枚目>

ホワイトハウスの歴代大統領の肖像が掲示された廊下で、
バイデン大統領のところだけが、
自動サインペンの絵になっているのを見て大笑いしている写真。

高市首相の感性は、トランプに近いものがあるのでしょうが、
普通の人だったら、例えば石破茂だったら、
こんなリアクションは絶対に取らなかったと思います。

<4枚目、5枚目>

車から降りた高市首相を出迎えたトランプに抱き着いている写真。
トランプの横にいて、彼の手の上に、自分の手をのせている写真。

日本人は通常、身体的接触は、距離を置くものです。
普通に外国人でも、ここまではしないと思います。
まして、一国を代表する人物の場合は、なおさらです。

記者会見の席で、高市首相が、
英語で直接トランプに話しかける場面がありました。

よく聞き取れなかったみたいで、トランプが、
「優秀な通訳がいるので、通訳を使ったら」
とやさしく言っていました。

高市首相が、トランプのことを
「ドナルド」と呼んでいたのに対して、
トランプは、「プライミニスター」と呼んでいました。

これも、チグハグな感じがします。
こういうのは、事前に事務方で調整できなかったのでしょうか。

首脳会談の冒頭に、高市首相は
「世界に平和と繁栄をもたらせるのは、ドナルドだけだ。
諸外国に働きかけて応援したい」と言いました。

「世界に戦争と破壊をもたらしているのは、あなたです。
諸外国と連携して、なんとかやめさせたい」と言うのが
本当のところでしょうが。

今回は、共同声明もなく、私は米側は
やや距離を置いていたのではないか、という気がしました。

先に述べた、首相の浮かれて踊っている写真が
ホワイトハウスのホームページにも出ているそうです。

アメリカは、口では高市首相を持ち上げていますが、
ちょっと引いているところもあるのではないかと思いました。

やはり、米国にとって最大の関心を以て取り組もうとしているのは、
5月に延期された米中首脳会談です。

その妨げにはならないようにしたいというのが、
日米首脳会談にのぞむ米側の姿勢だったのではないかと思いました。
だから、中国を刺激するようなことは出てきませんでした。