憲法9条の解釈(1)

(9条1項)
日本国民は、
正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、

国権の発動たる戦争と、
武力による威嚇又は武力の行使は、

国際紛争を解決する手段としては、
永久にこれを放棄する。

第一項の条文です。
戦争放棄」の規定です。

若い政治学者の方が、1項も含めて、
9条そのものを削除する
という意見を述べていました。

昨今、力の行使が横行する中で、
そういうあり方を常態と捉えているのでしょう。

アメリカ、イスラエル、ロシアといった国々の
軍事作戦ばかりが目立っています。

でも、これらの国々は、特殊なのです。
大部分の国は、こういう思考法、行動様式を
取っていないのです。

そっちばかりに目を奪われてしまうと、
大多数の国が持っている、
法規範、常識を見失うことになります。

戦争放棄」の規定は、日本だけの特殊なもの
ではありません。

歴史上、他の諸国の憲法にも
似たような規定がありましたし、

特に第二次世界大戦後は、
戦争放棄」の思想は、世界の主流であり、
常識なのです。

日本が特殊な国なのではなく、普通の国です。
アメリカが特殊な国なのです。
アメリカは、世界のスタンダードではありません。

世界の主流は、力の支配ではなく、
法の支配を求めています。

諸国の憲法に見られる、
戦争放棄」の条文を見てみます。

イタリア11条:「イタリア国は、他国民の自由を侵害する手段として、
及び国際紛争を解決する方法として、戦争を否認し」

スペイン憲法6条:「スペインは、国策の手段としての戦争を放棄する。」

大韓民国憲法4条:「大韓民国は、国際平和の維持に努力し、
侵略的戦争を否認する。」

西独26条:「諸国民の平和的な共同生活を乱すおそれがあり、
かつ、その意図をもって行われる行為、
特に侵略戦争の遂行を準備する行為は、違憲とする。」

ビルマ連邦憲法211条:「ビルマ連邦は、国策遂行の手段としての戦争を放棄し、」

フィリピン憲法2章3条:「フィリピンは、国策遂行の手段としての戦争を放棄し、」

ブラジル連邦憲法7条:「征服の戦争は禁止される」

フランスⅠ(1791年)6篇:「フランス国民は、
征服の目的でいかなる戦争を企てることをも放棄し、」

フランスⅡ(1848年)前文:「征服を目的とする
いかなる戦争をも企てることなく、・・・決してその武力を行使しない」

東独8条:「ドイツ民主共和国は、征服戦争を企図し、
又は他国民の自由に対してその戦力を行使しない。」


いかに、各国が
国際紛争を解決する手段としての戦争を
放棄しようとしてきたか、おわかりだと思います。

憲法9条1項は、こうした世界の潮流の中にあり、
極めて普遍的な価値を目指しているのです。
日本は普通の国なのです。変わった国、特殊な国ではありません。

おかしいのは、アメリカであり、ロシア、イスラエルです。
これらを、スタンダードと考えてはいけません。